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生活の豊かさと五感に正直であること
Vol.2(text by 古川 真由子)

2016年から2017年にかけて、オーストラリアのメルボルンに在住していました。

メルボルンは、2017年まで過去7年連続で、世界で最も住みやすい都市として不動の位置を築いています。そして、これこそがメルボルン行きを決めた最大の理由でした。

「世界で1番住みやすい街に住んでみよう。」 と。

メルボルンは市内に路面のトラムが鐘を鳴らしながら行き交い(しかも中心部は乗車無料)イギリスの面影が感じられる、ゆったりとした街並みです。ガーデンシティといわれるほど街全体に公園や緑が多く、自由な雰囲気がありながら、ストリートアートや食などのクリエイティビティがとても高いことが特徴的です。

5人に1人が移民。なのに、人種やコミュニティ、年齢も異なる様々なライフスタイルがそれぞれの価値観を崩すことなく成り立っています。
それを象徴するかの様に、訪れたこともなく急に住むことを決めたこの地でしたが、暮らし始めて2ヶ月が過ぎた頃、気づけば10ヵ国以上の人と知り合っていました。
(それまで南米の友人なんて知り合うことも想像していなかったので、ちょっと感動しました。)

他者を受け入れることに街も人も慣れている、この包容力の高さ = 住みやすい理由なのだとすんなりと腹落ちするようになりました。

ちょうどその頃、私はよりよい環境を求めて家探しをしていました。
条件は、海と緑が近い陽当たりのよい場所。
4軒目ぐらいで見つけた部屋はそれを叶える、大きな窓から緑が見える素敵な部屋でした。

こちらでは内見をして遅くとも2日以内にはYes/Noを判断するのが一般的。それに習って必要な手続きをさっと終え、決めた1週間後にはそこで暮らし始めることになりました。

引っ越し初日、片付けを終え一息ついたところで、 ん? と違和感がありました。
陽当たりは抜群だし快適なのですが、感覚的に何かがしっくりこないんです。

さっき私は街の北側から南側へ引っ越してきたのに、自分がきた方面の方が明るい・・

なるほど、南半球。

日本での常識、南向きが明るい。は、ここでは北向きが明るい。のだとようやくそこで気付きました。
というより、私は南向きが明るいことを信じきって部屋探しをしており、決めた部屋は 「しょうがない、北向きだけどほかの条件がいいからいいか。」で決めた部屋でした。

自分の勘違いからうまれたポジティブな偶然ではあったものの、 そのとき感じたのは、空間の住みやすさも自分の柔軟性、あえていうならば自らの包容力に応じて変化するものだと思いました。
今回は大陸が違うので極端な例ですが、そもそも偶然性を楽しめることって大切だなと。

ちょっと逆説的ですが、こだわりを持つことは良いことだけどそれが自分の中の絶対条件になると少し息苦しい感じがします。予定不調和や偶然もなんとなく受け入れられる土壌を作れる包容力が日々起こる様々なことを豊かに感じられるヒントなのかもしれないなと思いました。

メルボルンで暮らす人々は自然に即した生き方を好む傾向にあります。
朝早く起きて、自然の恵みを食べて、人と会話して夜早く寝る。シンプルだけど人より自然の威力が大きいことを知っている土地柄だからこそ、自然にあえて逆らった暮らしをしない。
そうやって街も人も包容力に溢れた心地よい魅力がうまれていると今は実感しています。

(メルボルンのお話は今回を皮切りに、このコラムの中でも折に触れてご紹介していきたいと思います。)